錬金術/吉田光邦

YOUKIAya

2015年07月17日 10:08


 こんにちは、結城です。



 ピース又吉さんが『火花』で芥川賞を受賞されたようですね。たいていの場合受賞してから作家や作品のことを知るのですが、今回のように候補にあがる前から広く知られていることは稀といってもいいでしょうね。
 なにはともあれ、このことで読書離れや出版不況が少しでも解消されたら、と願うばかりです^^
 又吉さんお薦めの本というフェアも開催されていますし、みなさん、少し活字の本も読んでみてはいかがでしょうか?^^

 ということで今回はちょっと古いものですが、なかなか興味深い本のご紹介です。



■錬金術/吉田光邦

書 名/錬金術~仙術と科学の間
著者名/吉田光邦
出版元/中央公論社
判 型/新書判
定 価/200円
シリーズ名/中公新書(中公新書9)
初版発行日/昭和38年3月5日
収録作品/はじめに、仙術と哲学の混沌・中国、魔術から科学へ・西洋、日本の練金・練丹術

 錬金術…というと中世ヨーロッパのものというのが一般的なイメージだろう。本書でももちろんその辺りについて述べられているのだが、副題に「仙術と科学の間」とあるように中国における錬金術=仙術から話が進められていく。錬金術といえば、やはりパラケルススや薔薇十字団といった名称が浮かんでくるので、中国の仙術から話が始まることには多少の戸惑いもあったが、読み進めていくと、なるほど、と納得してしまう。またヨーロッパにおける錬金術にしても、いきなり中世ヨーロッパに関して語るのではなく、古代ギリシアに逆上って錬金術という概念の発祥から考察されるので、より錬金術というものについて理解が深まるといっていい。そういう意味では中世ヨーロッパの錬金術のみを扱った書籍に較べ、錬金術というものを俯瞰して捉えることのできる本であると言うことはできるだろう。
 また錬金術をホムンクルスといった人造生命体を筆頭にオカルト的な観点から見ることも多いと思うが、本書においては物質を変換させるという科学的な視点を中心において論じていることも付け加えておこう。