YOUKIAya
2015年07月17日
19:28
こんばんは、結城です。
ずっと古い本を紹介してきましたが、今回は最近刊行された文庫本のご紹介です^^
■幻獣辞典(河出文庫版)/ホルヘ・ルイス・ボルヘス
書 名/幻獣辞典
著者名/ホルヘ・ルイス・ボルヘス
出版元/河出書房新社
判 型/文庫判
定 価/1100円(税別)
シリーズ名/河出文庫(ホ5-1)
初版発行日/2015年5月20日
収録作品/幻獣辞典
本書は1974年に四六版変形の四角いハードカバー本として晶文社から刊行されたのが日本における最初のもので、以後98年、2013年に新装版が刊行され、今回の文庫判が4度目の刊行となる。74年の最初の版が息の長いもので、わたしがこの本を知った80年代にも新刊書店の棚には並んでいた。
今回の文庫化にあたり訳者の柳瀬尚紀氏も一通り見直したようだが大きな変更点はなく、元版をそのまま文庫化したと思っていいようだ。ただし、取り上げられている幻獣の掲載順は入れ代わっている。元版では最初に掲載されているのが「ア・バオ・ア・クゥ」だったが、文庫判では2項目目になっている。「ア・バオ・ア・クゥ」は勝利の塔の螺旋階段に住むとされる生き物で、『機動戦士ガンダム』でジオン軍の最終兵器の名称としても使われたもの。本書を読むと冨野監督がこの名称を使用した理由がなんとなくわかるかもしれない。
ボルヘスはその人自体が巨大な図書館と評される読書量と記憶の持ち主で、本書も古今東西の文献から集められた幻獣の宝庫といっていい。ユニコーンやセイレーンといったよく知られたものから、本書よって多くの人が初めて知るようなものまで数多くの幻獣たちが紹介されている。図版はそれほど多くないが、文章のイメージを補完する形でいくつかの幻獣が掲載されている。
本文庫判の帯には「最良の異世界案内本」とあるが、幻獣について知るだけではなく、その幻獣が登場する作品にも、本書を読むことで興味がわくことだろう。その意味で、本書は幻想文学の入り口となりうる本なのだ。ひとつひとつの項目はそれほど長くはない。本書を手に取って気まぐれにページを開いてサラッと読むという楽しみ方もオススメだ。
ところで、この『幻獣辞典』が文庫化されたことには、正直驚いた。「え、これが文庫に?」というこの感覚は、たぶん渋澤龍彦の著作が河出文庫から刊行されたときに、当時の読者が感じたものに似ているのではないかと思う。本好きには、これはハードカバーや函入りの本であって、文庫にはして欲しくないというイメージの強いものがあったりする。本書も個人的にはそのひとつだったということを、この文庫化で知った。